学芸大学『目黒ひいらぎ』
昔ながらのたいやきの良さを残しつつ、その佇まいと味わいの目新しさはSNSでも大人気。たいやき界のニュースタンダードともいえるお店が、学芸大学にある『目黒ひいらぎ』。店主が考える、たいやきの新しいカタチ、目指す先とはーー
「街にとけこみ、人々の生活にとけこむ。そんなお店を目指しています」
出来立てはカリカリ! あんこは尻尾までぎっしりで、丸々太ったカタチがかわいらしい。たいやき1個200円。
焼き上げるまで30分――『目黒ひいらぎ』のたいやきは、パリッとした薄皮にしっとりなめらかなあんこがたっぷり。甘すぎず、キレのよい上品な味わいで、辛党でもペロリといける。
「決め手は塩。あんこに入れる塩をちょっと強くしているので、味がしまるんですよ。皮は小麦の香ばしさと食感を味わっていただきたいので、水分を多くして薄づきに。両面が焼けた後もじっくり表面をあぶるように焼くので、水分が飛んでパリパリになります」
美味しさの理由を惜しげもなく明かすのは、オーナーの野中聖之(まさゆき)さんだ。
地元民はもちろん、SNSを中心に若い世代から高い支持を集める『目黒ひいらぎ』は、2011年12月に1号店(碑文谷公園通り店)を、その10年後の2021年11月に2号店(学芸大学東口店)をオープンさせた。いまや学大のたいやきといったらここ、というほどの有名店に。お店の前でたいやきと自撮りする若者たちの姿も、すっかりお馴染みの光景だ。
北海道産小豆を100%使用。一晩寝かせることでなめらかになるそう。あんこ単体(粒あん300gパック480円)も販売している。
たいやきなのにスタイリッシュ。
そんな評判通り、白を基調にスチールやコンクリ、木を取り入れたシンプルな店内は、某ファッションブランドのサロンを彷彿とさせる。聞けば、野中さんはアパレルから転身したそう。
「アパレル時代はVMD(ヴィジュアルマーチャンダイジング)という、陳列や装飾部門にいたんです。そんな中、知人の紹介で訪れたたいやき屋さんの店長と仲良くなって。たいやき屋さんの見せ方を変えたらどうなるのか、というアイディアが僕の中でむくむく湧き上がって、楽しくなってしまって。もともと自分のお店を何かしらやりたいと思っていたので、これだと」(野中さん。以下「」内同じ)
ただ、洋服に比べて単価が安く、売れ残ったら廃棄しなければならない。“たいやき”に可能性を感じた理由は?
「『恵比寿 たいやき ひいらぎ』の社長(※『目黒ひいらぎ』は『恵比寿 たいやき ひいらぎ』から暖簾分けしている)から『手作業で作って、その場でお客さんに届ける。それこそが商売の原点だよ』と言われてガツンと来て。これがわからずにどの職種に行ってもできないだろう、ということを教えていただいたのが大きかったですね」
「最初はあんこを真ん中にのせるだけでも大変でした。でもオーナーが『100匹までは失敗していいよ』って言ってくれて。コツを掴むまでは、実践で覚えていくしかないですね」(アルバイトスタッフ)
たいやきのブランディングで気をつけた点は、内装だけではないそう。
「たいやきが大衆的なお菓子であることは変わりないので、無理に高級感を持たせたいわけではないんですけど、つっかけパジャマ姿で何かのついでに…っていうより、たいやきを買うために足を運んでもらえるような店作りを心がけています。あんこの味では高級店の和菓子と引けを取らない自信がありますから」
両面に火が通った後も、焼き台に乗せて、表面がパリパリになるまで焼き上げる。
たくさん買って食べきれない時は、冷凍保存も可能(賞味期限は1週間ほど)。レンジで30秒ほど温め(冷凍の場合は約1分)、仕上げにトースターで2〜3分表面を焼くと、お店のようにパリッと仕上がる。
「焼きたてが美味しいのはどこも一緒。うちは冷めても美味しいたいやきです」と自信をのぞかせる野中さん。昨年オープンした学芸大学東口店には喫茶席を設け、自慢のあんこを使った和スイーツを店内で食べられるようにした。今後の新たな取り組みは?
「たいやきの歴史は100年以上あるんですが、それほど形を変えずにずっと続いてきているんです。ということは、これからも変えることなく継承していくことが大事なのではないかと。とはいえ、ある部分では時代に合わせて変えることも必要で。コロナがきた、不景気になったって、ただ文句を言っているのは違うと思うんですよ。変わることと変えちゃいけないことを見極めながらやっていくしかない」
歌舞伎や文楽など、日本伝統の継承と創造にも通じる心意気!
「いやいや…そう大袈裟なことでは…(照れ笑い)。
ただ、僕、歌手の河島英五さんの『時代おくれ』という歌が大好きなんです。時代に流されず、大事なものを大切に思い続けている男の歌なんですが、そうなりたいなって。
丁寧な仕事を続けて、これからも細く長く学芸大学という街に根付いて行きたいと思っています。学大で育った子供たちがよその街から帰ってきた時に“懐かしい”って感じてもらえるように」
目黒ひいらぎ’s ヒトトナリ
アルバイトスタッフは、デザイナーや役者など夢を追いかけるメンバーが多い。笑顔が絶えない、さっぱりとした風通しのいい接客も好感度大。
目黒ひいらぎ’s オトナリ
小野田商店 学芸大学店、リ・カーリカ
「もともとお酒を飲まないのであまり出歩かないんですけど、居心地が良くて美味しいこの2店はたまにお邪魔しています」(野中さん)
Information
目黒ひいらぎ 碑文谷公園通り店(持ち帰りのみ)
ADDRESS 東京都目黒区鷹番3-18-3
TEL 03-6412-7945
OPENING HOURS 11:00〜18:00(17:00以降、売切次第)
CLOSED 無休
RESERVATION 可
Instagram @meguro_hiiragi
目黒ひいらぎ 学芸大学東口店(喫茶席あり)
ADDRESS 東京都目黒区鷹番2-8-23
TEL 03-6303-1709
OPENING HOURS 11:00〜19:00(18:00以降、売切次第)
CLOSED 無休
RESERVATION 可
photo & text & movie:otonari編集部
(2022/5/1現在)
Comentarios