Addict au Sucre

都立大学『Addict au Sucre(アディクト オ シュクル)』



スイーツ激戦区・都立大学の中でも最も注目を集めている、実力派パティスリー『Addict au Sucre(アディクト オ シュクル)』。スイーツ中毒という意味を持つ同店の魅惑的なスイーツを一度口にすると、“虜”になるばかりか“禁断症状”が出てしまうほど! その美味しさの秘訣は、レシピやマニュアルでは表せない、シェフパティシエール・石井英美(えみ)さんの“真心”に隠されていました。



「誰かに喜んでもらいたい」この気持ちに勝るものはありません



「すっごく美味しかったから!みんな食べて!」

「めちゃうまー♡」

「混ぜると味が変わります 栗とカシスがほんとよく合います」


寿司業界最大手『スシロー』とのコラボパフェ※1は瞬く間に大人気となり、伊勢丹、阪急、高島屋、小田急、西武、近鉄…など、大手百貨店の目利きバイヤーがこぞって口説きに来る※2。もちろん、実店舗でも飲食業界の人が行列に並ぶ姿は珍しくない。

都立大学にある『Addict au Sucre(アディクト オ シュクル)』は、2014年のオープン以来、一般客はもちろんプロも惚れ込むスイーツを生み出し、話題を集めているパティスリーだ。


※1スシローとのコラボ商品名は『マロン&カシスのパフェ』。期間は10月いっぱいまで。在庫がなくなり次第終了となります。

※2現在は伊勢丹オンラインストアで販売中。取り扱い店舗や該当商品、販売期間、販売個数などはその時々で異なります。    Addict au SucreのHPやSNS等でご確認ください。


シェフパティシエールの石井英美さん。『Addict au Sucre』は独立後わずか数年で全国のスイーツ好きが知る超人気店へ。



「フランス菓子の魅力は食べて美味しいだけではなく、それぞれのお菓子に由来や歴史があり、広がりを感じられることです」と話すのは、シェフパティシエールの石井英美さん。そんな奥の深いフランス菓子が、Addict au Sucreでは石井さんらしい解釈で鮮やかに表現されている。


たとえば誰もが手軽に食べられて味の想像がしやすいクッキーは、口に入れた瞬間から広がるフレッシュなバターの風味、ザクッもホロッもしっとりもある楽しい食感、それぞれの異なる口溶け…。これまで知っているはずのソレとは全くの別モノで驚かされる。

生菓子に至っては、この味の正体は誰か、誰がリーダーで誰と誰が仲良しなのか?と、味から紡ぎ出されるストーリーに没頭してしまう。余韻に浸ること数日後、また食べたいという“禁断症状”が出てくる。


まさに、Addict au Sucre=(フランス語で)スイーツ中毒‼️


「Addict au Sucreを店名にした理由は、もともと私自身が1日3〜4軒ケーキ屋さんをはしごするくらい“甘いものマニア”だったことが大きいです(笑い)。それと、本に載っているレシピを毎日片っ端から焼いて、もはや中毒症状なんじゃないかっていうほどお菓子作りにのめり込んでいた“初心”を忘れないように、という気持ちから。さらにお客さまが“虜”になるようなお菓子作りをしよう、という自分への約束でもあります」(石井さん・以下「」同)

5種類の小さなクッキーが詰め合わせられた「ボワット レ シャ」(2160円)。このほかにも猫が描かれた同店のクッキー缶は“猫缶”と呼ばれ、「限定缶は予約できたらラッキー」とスイーツファンからも絶賛されている。イラストのモデルとなったのは、石井さんの飼い猫・ロシアンブルーのジョゼ(女のコ・10才)。



「パリブレスト ノワゼット オランジュ」(627円)。本場ではリング型のシューを使うのを、食べやすいようエクレア型にアレンジ。ザクッと軽い食感ののち、クリームが驚くほど柔らかく溶けていく。板チョコの食感、爽やかなオレンジのコンフィーがアクセントに。



まんまとその策に乗り、Addict au Sucreの虜となってしまった記者だが、焼き菓子も生菓子も「全部が美味しい!」のが不思議でならない(これまでの経験上、どれだけ美味しいと評判のお店でも、話題の商品以外は“普通”ということが多かったため…)。

レシピ? 素材? 他のお店と何が違うの? 美味しさの秘訣を石井さんに尋ねると、意外な答えが返ってきた。


「お菓子って、レシピ通りに作れば完璧に美味しくなるかと言われると、それだけではないんです。私もその昔、レシピ通りに作ってもなぜかうまくできないものがあって、当時は分量が間違っていると思っていたんですが、いま読み返すと合っていて(笑い)。


大事なのは、お客さまの嬉しいという気持ちを想像して作ることなんですよね。


実際、うちのスタッフにパティシエになりたい理由を聞くと、最初は『美味しいお菓子を作りたい』って言うんですが、それを突き詰めていくとほとんど『人に喜んでもらいたい』になるんです。


じゃあそれを達成するためにはどうすればいいの?っていうと、美味しく作るのは大前提として、商品棚に並べられたら終わりでもないし、売ったらおしまいでもない。家に帰られたお客さまが『良い接客だったね、良いお店だったね、食べたら味も美味しいね、また行きたいね』と満足されてやっと成り立つことなんです。これはお菓子作りやお店作りと切り離せないことだと思いますし、逆に言うと、私たちの仕事は、そのための気遣いや感性の積み重ねをやっているだけなんじゃないかなと思います」

「ミルフイユ フレーズ ピスターシュ」(637円)のクリームを絞る石井さん。決して流れ作業にはせず、ひとつひとつの手作業がとにかく丁寧。そしてなにより楽しそうに作っているのが印象的だ。



よく家庭でも「美味しくな〜れ」と愛情を込めて料理を作ると美味しくなると言われるが、そんな“真心”こそが、プロフェッショナルの美味しさの秘訣だったとは!


とはいえ、味の組み合わせもビジュアルも、全ての設計図は石井さんの頭の中に。「金箔を端っこに付けると風に揺れて儚げでいい」「小さいクッキーがみしっとしてるのがかわいい」といった独特のセンスとバランス感覚は、「アパレル経験が役に立っているのかも」と石井さん。

つやつやのショコラに金箔が儚げに揺れる「オペラ」(594円)。しみしみの生地でするっといただけると思いきや、コーヒー、アーモンド、ガナッシュと芳醇な風味がレイヤードで追いかけてくる余韻の深い逸品。



実は石井さん、この世界に飛び込んだのが28才と、決して早くはない。

大学卒業後にアパレルブランドで2年働いたのち、実家の保育園を手伝うこと5年。毎日の暮らしに不満はなかったものの、「お菓子作りを職業にしたい」という気持ちが勝手に湧いてきて抑えきれなくなってしまったのだという。


「それに気づいてから何年も葛藤しました。一緒に働いている家族に、いまの仕事を辞めて製菓学校に行きたいというのがどうしても言い出せなくて…。入学願書を取り寄せながら提出できずに1年、また1年…というのを繰り返していました。でもやるんだったら20代の方が雇ってもらえる可能性が高いだろうと思い、駆け込みで願書を提出したんです。家族には願書を出したその日、保育園の事務室で初めて報告しました。あの日のことはいまでもありありと思い出します」

バターの風味がフレッシュで香り高い焼菓子たち。常時20〜30種類あり、通販可能な商品も。



「当時は家業を手伝わないことがとにかく申し訳ないし、もうこの家を出て行かなくちゃならない、って思い詰めていたんですが、親は毎晩お菓子を作っていた私を見て気づいていたみたいです。『やりたいってもう決めたから言ってきたんでしょ。だったら反対はしないよ』って。

逆に背中を押してもらいました。学校にはフランス校に行くコースもあったんですが、金銭的に諦めようとしていたんです。そしたら父に『ばかやろう。そんな気概でお前はうちの仕事やめてパティシエになったのか? 自分の人生を賭すつもりで文無しになってもいいから行ってこい』って初めて叱られましたね(笑い)」


そう話しながら、大きな瞳をみるみる潤ませる。寂しい気持ちを抑えながらも応援してくれている家族を思い出すと、いまも胸に迫るものがあるという。

生菓子は季節により12〜15種を展開。季節の限定品もあるので見逃せない。



そんなあたたかい家族で育まれた愛情深さや、保育の現場で子供たちの個性を伸ばすために培ったノウハウは、スタッフへの教育にも生かされている。


「昔は私が何かを話したところでわかってもらえないだろうと思ったりもしたんですが、若い頃に聞いた先輩の話って結構思い出すものなんですよね。

私が先輩がたのような言葉を言えているかは自信ないですが、毎日お店で同じ時間を過ごしながら、作っているときでも失敗したタイミングでも、終礼でも、なぜそうなるのか、これをこうすればうまくできるよっていうことをできるだけポジティブに伝えようと心がけています。

でももしその助言通りに彼らが動かなくても、責めたり凹んだりはしません。みんなそれぞれ個性があるのだし、そもそも合わなくて当然ですから。ただお店を運営するうえで重要なところだけは統一してね、と伝えています」

「フィナンシェ」(270円)は毎朝10時に焼きあがる。「本国のかたが来てもちゃんと美味しいと思ってもらいたいので、フランスで置いてあるベーシックなものは押さえておきたい」。



ではその“重要なところ”とは?


「接客でも製造でも、マニュアルだけを頼りにした“業務”としてこなすな、ということです。私たちがやりたい仕事は、お菓子を通してお客さまの心を動かすこと。だから自分たちの仕事にも心というか魂みたいなものを入れて取り組みましょうよ、というのが伝わるといいなと思っています」


たとえば接客で『何月何日にこのケーキ作ってもらえますか?』と問い合わせが来たときに、『ご用意可能でございます』とは答えないようにするという。


「なぜならお客さまはQuestionの形式で話してはいるけど、ケーキを買いたいと言ってくださっているからです。できる・できないというAnswerじゃなく、まずは『ありがとうございます。ご用意させていただきます』じゃないかなって。もしその日にそれが叶わなかったらご用意できないことを謝りつつも『代わりにこの商品はいかがでしょう』とか『お日にちずらすことはいかがでしょうか』とか、オプションを出すくらいはしてほしい。ピンと来ていなかった男性スタッフには『結婚してくれる?』とプロポーズしたら『結婚可能です』と言われたようなものだよ、と説明したらわかってもらえました(笑い)。ひとつひとつ、言葉でも態度でも伝えていくしかないですね」

「フレジエ」(680円)。ビスキュイ生地の間に、バタークリームとカスタードクリームを合わせたクリーム、酸味のあるいちごがサンドされている。しっかりした味わいの中に、爽やかさと華やかさを感じられる一品。



家業を振り切って製菓学校へ通った頃、全然客足が伸びなかった独立直後、人気店となって多忙&大所帯になったいま…どれも“大変”の種類が違うが、ここまで諦めることなくこの仕事に向き合い、お菓子を作り続けてこられた理由は?


「正直、送り出してくれた家族を安心させたいという気持ちが大きかったかもしれません。ですが家族と同じくらい、お客様もスタッフも飼い猫も私にとってかけがえのない存在。それが日々のモチベーションになっています。

将来の夢、ですか? 家族にも猫にも長生きしてもらいたいから、私も長く仕事を続けたいですね(笑い)。それと、スタッフたちに夢がある仕事なんだよって生き様を見せられるよう、仕事以外の生活も充実させたいし…。いずれはフランスにも出店してみたい。

そのためにも、これからも自分の心が沸くようなお菓子を作っていきたいです。『売れそうだから』ではなく『私が好きなもの』を基準に、お客さまが知らないような味や食感を紹介していきたいですね」



Addict au Sucre’s ヒトトナリ

優しさの中に天真爛漫さ、繊細さ、実直さ、独自性…と、まるで石井さんが手がけるスイーツのような多面的魅力の持ち主。撮影中は小声で「…よいしょっ」と言いながらクリームを絞ったり、「よし、かわいい」と呟きながら金箔を貼ったりする姿が印象的だった。そんな楽しそうに作っている姿を見ると、実家で毎晩お菓子を作っていたであろう“当時の石井さん”の姿が容易に想像できるから不思議です。



Addict au Sucre’sオトナリ

Elzéard(エルゼアール)、SHOE REPAIR STANDARD、BIONIC PLANTS、八雲うえず

「近隣に同業他社のお店が多く、ドキドキしながら出店を決めた都立大学にも愛着が。素敵な人たちがいるお店によくお邪魔しています」


Information

Addict au Sucre(アディクト オ シュクル)


ADDRESS 東京都目黒区八雲1-10-6 

TEL 03-6421-1049

OPENING HOURS 11:00〜17:30

CLOSED 火曜・水曜(不定休あり)

RESERVATION 可

HP https://addictausucre.com/

facebook https://www.facebook.com/patisserieaddictausucre


Photo:TANAKA HIROYUKI(https://tnk-photo.com/

Text:ツジモトユキジ

Movie:スギウラユウ

Direction : アサイシンイチロウ


(2022/10/30現在)


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